雲の舞

ジャスミンの香りを
夜風が運ぶ
 
おおきな明るい月の上で
雲が舞う
羽化したばかりの
蝶のように
薄くやわらかな羽を
おそるおそる動かして
 
水の匂いがする
小粒の雨が
家々の屋根を
静かに叩きはじめる
 
月の光にまもられて
少し濃くなった雲が
少し力強く踊りはじめる
 
もっと
もっとおおきく動いてごらん
もっと自由に流れてごらん
月がささやきかける
 
雨足が強くなる
ひんやりとした空気が
辺りに満ちる
 
舞い上がり
舞い降りて
流れては消え
消えては現れ
今や雲は
悠々たる舞い手だ
 
隠れることの多くなった
月は
雲が掛けるヴェールに
まもられて
眠りの闇へ
落ちてゆく

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