詩という名の蛇

我が友蛇よ
なぜおまえはよりによって
わたしのところへ来た
 
わたしは
おまえに胸を締めつけられ
すっかりおかしくなった
 
まくしたてるひとびとの声が
届かなくなった
耳

声なきものの
つぶやきばかり拾う
耳

空っぽの言葉を
吐き出せなくなった
唇

胸の内からあふれ出るものを
抑えていられなくなった
唇
 
詩という名の蛇よ
おまえに出会いさえしなければ
おまえを愛しさえしなければ
わたしの日々は平穏だったろうに
 
しかたがない
おまえを友にしたのは
このわたしなのだから

尖った神経が
通りすがりの風に撫でられて
痛みにふるえても

それを噛みしめ
呑みくだし
おまえが生きる
糧にしよう
 
分かっている
おまえを操る杖など
ないことを

おまえは決して
操られなど
しないことを

愛する友よ
どうか永遠に
そのようでいておくれ
 
誓おう
おまえを命綱には
けっしてしないと
 
でも
谷底へ落ちてゆくような
気持になったときだけは

おまえの体を
握らせておくれ
しっとりとした強靭な
その鱗を

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