音楽療法士になる夢を抱いたら今すぐに始めるべきこと-ソルフェージュの重要性

私は10年間、音楽療法士の育成に携わりました。受講生のなかには、音楽教育を受けていない人たちもいました。皆さん30代以上の大人です。彼女たちの、決しておおげさではなく、まさに「血のにじむような」苦労と努力を、目の当たりにしてきました。
私が痛感したのは、ソルフェージュの大切さでした。
もし、彼女たちが、子どもの頃からとは言わずとも、せめて音楽療法の勉強を始める数年前から、ソルフェージュを習っていたなら、これほど苦労しなくて済んだはずなのに…… そんな苦い思いを、私は噛みしめました。


ソルフェージュは、楽譜を読む技術、ただ読んでうたったり演奏したりできるだけではなく、フレーズがどこから始まってどこで終わっているか。どこにアクセントが置かれるか。和声進行はどんな効果を生んでいるか。などなど、「楽譜を読み解く」技術も含まれます。

また、楽譜を見て、頭の中で実際の音が響き、逆に、曲を聴けばそれを楽譜に起こすことができる能力も、ソルフェージュ能力です。これを身につけるために、音を聴いて楽譜を書く「聴音」の訓練も行います。

音楽理論は、ある程度、独学でも勉強することができるでしょう。しかし、本を読んだだけでは、理論が実際の「音」に結びつきません。ソルフェージュは、どうしても、指導を受ける必要があります。個人指導です。つまり、ソルフェージュの技能がなければ、音楽理論の勉強をいくらしても、あまり意味がないのです。


もちろん、音楽療法士に限らず、音楽の専門家になるためには、この技能を習得する必要があります。しかし、特に音楽療法の場においては、クライアントがうたい始めた歌にその場で伴奏をつけることや、その日の参加者の人数を見て、何の音が出る楽器を配るか、パッと判断すること、移調して伴奏する能力、即興演奏や作曲の技術、そして何よりも、聴く人の心に届く、音楽的な(理にかなって表情豊かな)美しい演奏ができなくてはなりません。

いくら美しい音の出る楽器を持っていても、長年レッスンを受けていても、ソルフェージュ能力がなければ、いつまで経っても音楽の素人のままです。何年経っても「先生」を必要とするアマチュアです。自分で自分の演奏を作ることができないからです。

子どもの頃は、私も正直、なぜソルフェージュがそんなに大事なのか、分かりませんでした。小学生の頃から毎週通って、子どもにとってはそんなに楽しいものでもなく、だいたいソルフェージュの先生は厳しくて、怒られてばかりだし、仕方がないから習っているという感じでした。まさか、大人になって、音楽で仕事をするようになった時、あの頃に習ったことが、音楽家としての「命綱」と言えるほど大切なものになるとは、夢にも思いませんでした。

今では、何度言ってもよく理解しない子どもだった私を、根気強く指導して下さった先生方に、いくら感謝してもしきれません。

ですので、将来音楽療法士になろうと思う方は、何よりもまず、ソルフェージュを習ってください。早ければ早いほど、得です。
ソルフェージュを習うことのできる音楽教室はこちらの記事で紹介しています。

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