美しい編曲のコツ-メロディに和音を付けちゃダメ☆

今日は美しい編曲がどうやって作られているか、種明かしをしてみたいと思います。例として使う曲は「ふるさと」です。
まず質問です。皆さんはピアノのために編曲をする時、以下の二つのうち、どちらの楽譜を思い描いてから、編曲していますか?

ピアノを弾く人は、上の楽譜のように音楽を捉えがちです。歌のメロディに即興で伴奏を付ける練習をする際に、上の譜のように、メロディに合う和音を選んで弾く方法を教わった人も多いのではないでしょうか。私も、音楽療法の授業で、こういう方法による伴奏を習いました。

しかし、音楽の歴史を思い巡らしてみると、もともと「和音」はコーラスの形(多旋律の音楽)から生まれたものです。上の譜のように音楽を捉えてしまうと、曲の美しさがザックリと削られてしまうのです。
ですから、私はピアノのための編曲をする時、下の譜のような4声のコーラスの形をもとにして編曲しています。上の二つの譜例をもとに、それぞれ分散和音の伴奏を作ってみました。まずは4声の楽譜です。

実際に音を聴いてみてください。

ふるさと編曲過程①
ふるさと編曲過程②

次に上の楽譜、曲を「メロディ」と「和音」に分けて捉えた場合の編曲です。

ふるさと編曲過程③
ふるさと編曲過程④

いかがでしょうか。実際には音が一つか二つちがうだけです。でも、4声の楽譜から起こした伴奏には、なめらかな流れが感じられませんか?

4声の楽譜を作るためには、基礎的な和声学の知識が必要です。和声進行には、いくつかの決まり事があります。例えば、メロディが上に向かって上がってゆく時には、バスはそれと反対に下へ降りてくるようにすると美しい。和音の中の同じ音は、なるべく持続させるなど。①の楽譜のテナーパートは、最初の2小節半、ずっとソの音ですね。

分散和音に編曲するためには、すべて規則通りにはいきません。でも、美しい部分は残す工夫をします。水色の丸印で楽譜上に表記しました。

このような方法で編曲をすると、必然的に「当てはまる音」が見えてきます。選択肢はほどんど無いのです。つまり、編曲された楽譜のすべての音には、根拠があるのです。
音楽は、数の調和です。数学にとても近い芸術です。ですから、編曲もけっして「感覚」や「当てずっぽう」で出来るものではありません。でも、音楽のこういうところが、私は大好きです。


「ふるさと」編曲譜はこちらです。

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