声を録音して送ってもらう時、私は届いた録音をすぐには聞きません。
最初に聞いた時の印象を、とても大切にしているからです。ですから、声リーディングのために充分な時間が取れる時、体も心も調子が良く、落ち着いている時、そして周りが静かな時間を選んで、声を聴きます。聴いている時は、ただ声だけに集中します。
一回聴いたら、少しの間、何も考えず、余韻に浸ります。すると、風が吹いてくるように、イメージや色や温かさや雰囲気が、どこかからやって来ます。それを言葉にし、詩のかたちに仕上げます。
この作業は休みを入れずに行います。
余韻の中から立ち上がって来るイメージや感覚のことを、アントロポゾフィー(人智学)の言葉で「Nachbild」と呼びます。日本語では「残像」と言うようです。心の耳を傾けて相手の声を聴くと、声に現れる相手の魂の姿が、私の心に残ります。その残像が詩の素材となります。
では、今日もお一人の方への詩と、感想をご紹介します。
Cさん 女性 50代
私が書き送った詩
わたしのもとへやって来てくれた すべての人たち わたしの周りで起こった すべてのこと どれも 愛おしい こらえた涙も 描くことが許されなかった夢も 握りしめて わたしは たくさん たくさんの命を 育んで来た 温かさと力を 惜しみなく注いで 今 ずっと握りしめて来た 少女のわたしが 羽ばたこうとしている 固まった羽が 少しずつほどけて 大きく もっと大きく 羽ばたこうとしている 力いっぱい 飛んでいいんだよ 大空をどこまでも 旅していいんだよ きっと びっくりするくらい 高く遠く 飛べるよ その確かな力を 今まで 育んで来たのだから
感想
なんて優しくて、救われる言葉なんだろう……
それが初めに読ませていただいた時の気持ちです。 さくらさん、ありがとう。
いろんなことを否定されて、「おまえが男だったら」と言われて来た心の傷を、傷だと思い続けて来た自分を手放す時だよって言ってもらえた、 それが読み終えた時の気持ちです。
私自身ですらうまく声に出せなかった気持ちを詩にしてもらえた、というのが率直な感想です。
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