癒しのための演奏はライアーでなくてはならないのか?

この問いに対する答えは「ノー」です。一方でライアーだからこそ出来ることがあります。

ライアーは、弦を直接指の腹で押し、放して音を響かせます。音が鳴る仕組みでいうと、ハープはチェンバロ、ライアーはピアノに近いということができます。ライアーは、弾く人の息づかいを、はっきりと感じさせる楽器です。尺八に近いくらいいきいきと、息づかいが音に現れます。

これはライアーの持つ大きな可能性であると同時に、危険性でもあります。
尺八は音を出すこと自体がとても難しい楽器です。演奏が出来るようになるためには何年、何十年にも及ぶ修練が必要です。何よりもまず、歌うことが出来ない曲を吹くことは無理なのだそうです。楽譜は、漢字です。

その点、ライアーは簡単に音が出ます。簡単に曲が弾けます。しかし、歌うことが出来ない状態で演奏すると、息づかいを伴わない演奏、聴いていて苦しい演奏になってしまいます。その点、一音一音空気を振動させて響かせなくてはならないハープの方が、苦しい演奏になる危険性は低いと思います。

しかし、まさにこの「息づかい」にこそ、癒しの力があります。
孤独な時、ライアーの演奏を聴くと、人の息づかい、人のぬくもりを感じます。それが、心に安心感と慰めをもたらします。

重い病気にかかり、点滴や人工呼吸器、バイタルを観察するモニターにつながれて集中治療室に横たわっている状態は、本来、身体の「内側」で営まれている生命維持活動が、身体の「外側」で、機械の助けによって行われていると捉えることが出来る、と聞いたことがあります。そういう状況下で、「自分が生きている感覚」を取り戻すために、本当ならば人との触れ合いやコミュニケーションが必要です。しかし、それが難しいのが病院、特にICUです。

ライアー演奏に現れる「人の息づかい」は、録音された音源からでも聴きとることが出来ます。ライブ配信では、より鮮明に感じることが出来ます。これは、私が約10年間、いろいろな形でのライアー演奏録音を試してみて、辿り着いた結論です。

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