今回はブルグミュラー21番「天使のハーモニー」を分析してみました。楽曲分析は勉強中ですので、あくまでも参考程度にご覧になってください。
「天使のハーモニー」とは、いったいどのようなものなのか。それを音楽で再現する試みの結果、生まれた曲であろう。A、B、A’、コーダから成る三部形式、四分の四拍子で主調はト長調、Bセクションで平行調のホ短調に転調している。
この曲には二つの特徴がある。一つは、曲全体が和音のアルペジオで構成されていることである。アルペジオを和音の形で演奏してみると、コーラスのように聞こえる。そういう意味で「天使の合唱」と訳すこともできるかも知れない。「armonioso(調和のとれた響きで)」という指示通り、コーラスのように聞こえるよう、アルペジオを構成する三連符の連なりは、粒の揃った軽い音で流れるように演奏することが大切である。
しかしながら、作曲者が敢えて、「和声」という意味も含んだ「ハーモニー」という単語を選んだのには理由があると私は思う。その理由が、まさにこの曲のもう一つの特徴である。
この曲のアルペジオは、そのほとんどが、単に和音を分解したものではなく、和音とペンタトニックの合成によって作られている。下半分は和音の構成音で、上半分はペンタトニック音列で構成されている。これにより、機能和声に完全に支配されることのない自由さ、または素朴さが感じられる。
和声進行に支配されたコラール(讃美歌)を「人間的なもの」、「人間の感情の表現」と捉えるならば、それに対してペンタトニックの旋律は、「自然さ」や「純粋さ」の象徴と言える。この曲では、低音部の和声進行が曲を導いてゆく一方で、高音部では変わることのない「純粋さ」が響く。これこそ、作曲者が描いた「天使のハーモニー」なのではないだろうか。
コーダに入り、ハ短調からの借用和音により曲が盛り上がり、アーメン終止(ドミ♭ソ→ソシレ)とともに頂点に達する。最高音はh”’と、かなり高い音である。その後は下降形のフレーズを経て、低音域で再びスフォルツァンドを伴ったアーメン終止(ミ♭ソシ♭ド♯→レソシ)が鳴り響き、最後は完全終止により静かに曲が終わる。
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