想いを込めた演奏、聴く人に気持ちが伝わる演奏をするためには、秘法があります。それは、演奏の前に楽器に息を吹きかけて、呪文を唱えながら演奏を始めることです←大うそです!(笑) 今ひっかかった人、ヤバいです。悪徳商法にご注意を。
ここから真面目な話です。
実は、私は演奏をする時に、「想いを伝えよう」とか「気持ちを込めよう」と意識したことは一度もありません。しかし、ピアノやライアーの演奏を聴いて下さった方々から、「想いが伝わってきた」というとても有難い感想をいただくことがあります。
私が演奏をする時に大切にしていることは、まず、よく楽譜を読むことです。何拍子の何調の曲で、どんなリズムが使われていて、メロディはどんな構造になっているか。曲全体はどんな物語か。どこでどんな和声が使われているか……などなどです。実際に音にする時は、聴く人がその楽曲の特徴をはっきりと感じられるように、いろいろな工夫をします。
例えば、明るい長三和音が暗い短三和音に移行する部分では、手の力を抜いて、音が自然に弱くなるようにします。ドミナントの和音(五度の和音)からトニカ(一度の和音)に移る時にも、同じように力を抜いて、一度の和音で落ち着く感じを出します。
メロディのダイナミックも、和声の進行と同じよう進む場合は、右手と左手、両方で強弱を作ります。和声は短調になる一方で、メロディは頂点に向かって膨らんでゆく場合もあります。そういう時には例えば、音の強さを変える代わりに、テンポをほんの少しだけ速くしたり、遅くしたりして、表現します。
練習をする時には、たくさん頭を使います。例えばピアノという楽器は、力を入れて強く鍵盤を叩けば大きな音が出るわけではありません。音の強さを決めるのは、ハンマーが弦を打つスピード、つまり、指が鍵盤を打つスピードです。大きな音を出そうと思ったら、ほんの一瞬だけ指に力を入れて、速いスピードで鍵盤を弾き、すぐに離します。「弾く」動きよりも、音が鳴った後、素早く脱力して、指を鍵盤から「離す」動きに意識を集中させます。
子どもの頃は、何も考えずにピアノの練習をしていました。先生に言われた通りに、あっちを弱くしたりこっちを強くしたりして曲を仕上げていましたが、「なぜ」こういう強弱をつけるのか、「どうやったら」思い通りに表現できるのか、そういうことは何も考えていませんでした。だから、私の演奏は高校生になっても「金太郎飴」(どこを切っても同じ顔が出てくる飴)だったのです。(音大の夏期講習のレッスンで先生からそう言われました。)
頭よりも、もっとたくさん働くのが、耳です。全力を尽くして、自分の演奏を聴きます。体を覆う皮膚のどこにも、無感覚な部分がないように、意識せずに弾いている音が一つもないように、耳を澄まします。演奏者自身が聴かずに弾く音は、聴く人の耳を通して、心を傷つけます。ん? 今、私、怖いこと言ったかも……汗
きめ細かに織り成された、端正な演奏には、おのずと魂がこもります。そういう演奏は、弾く人の考えや感情を伝えるのではなく、聴く人の心を動かし、聴く人が必要としているメッセージを運んでくれます。
少々深い話になりました。しかし、これこそ、私が音楽療法士としての経験を積んだなかで、知ったことです。
さて、楽譜から曲の構造を読んで、どういう音で弾いたらよいか判断する力は、ソルフェージュによって身につきます。ですので、繰り返しになりますが、ソルフェージュが大切なのです。
ライアー演奏とピアノ演奏をアップしています。未熟な演奏ですが、よろしかったら聴いてみてください。チャンネル登録していただけたらとてもうれしいです。→ くどうさくらYouTubeチャンネル
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