うつ病は治るのか – 診断から10年目の今、私に言えること

うつ病は治るのか? これは私自身、この10年間ずっと抱き続けてきた疑問でした。今、私に言えることがあります。それは、うつ病は「治る」ものではなく「勝利するもの」「勝利出来るもの」であるということです。時間がかかっても、勝利出来るようになる日は、必ず来ます。

うつ病にはいろいろなタイプがありますが、その中でも一過性のもの、つまり、それ以前にはうつ病の症状がまったく無かったが、何かがきっかけで抑うつ状態になり、うつ病と診断されるケース。このタイプは多くの場合、一定期間で回復し、その後は再発しないと習いました。ただし、私には医学的知識がありませんので、詳しいことは直接お医者さんに相談してくださいね。

一方で、うつ病と診断される以前から、抑うつ傾向や不眠症など、何らかの不調が常にあり、診断されて抗うつ剤による治療を続けて1年、2年と経ってもなかなか治らない。調子の良い時期があっても再び悪くなるというパターンを繰り返す。こういうタイプのうつ病を抱えた人は、「このまま治らないのでは?」という不安を抱くと思います。

私もこのタイプでした。不眠症の傾向は18才の頃からありました。抑うつ状態が酷くなり、薬を飲まなければ眠れず、足の感覚がなくなって立てなくなる転換性障害(昔はヒステリーと呼ばれていたもの)が起こるようになったのが25才、17年前です。

これらの症状が重くなり、仕事に支障をきたすようになったのが32才、今からちょうど10年前です。心療内科でうつ病と診断され、抗うつ剤治療を開始しました。それから約4年間は、1年に数回、数か月単位で入院していました。

少しずつ、入院する回数と期間が減り、この2年間は入院していません。現在も抗うつ剤と安定剤は毎日服用しています。抗うつ剤の量は最高量ではありませんが、最低量でもなく、中量です。
うつ病と診断され、精神障害2級の認定を受けてからも、以前からやっていた仕事を細々と続けていました。それも3年前、すべて辞めました。現在は、自分の能力を活かして末永く自宅で出来る仕事の基盤を、地道に作っているところです。

結局、私は治ったのか、治っていないのか。
うつ病になる前のように、外で働いたり、国内海外どこへでも行く体力は、今の私にはもうありません。1泊2日の旅行さえ、考えただけで億劫です。しかし、抑うつ気分は、今やまったくありません。あの逃れようのない、のたうち回る苦しみは、もうありません。

結果、うつ病になる前よりも、心は平安で、充たされています。新しい一日一日が、素敵なプレゼントのようです。

うつ病が治ったというよりも、私はうつ病に勝ったのだと思います。それも、自分だけの力によってではなく、たくさんの助けと、そして「時間」という魔法によって、勝利させてもらったのだと。
25才から17年間に及ぶ苦しみとの闘いを通して、私は以前とはちがう人間になったと思います。洞察眼と賢さ、決断力と忍耐力、そして毅然とした精神を手に入れたと思います。

人生で一番華やかで、結婚や出産も含めていろいろな可能性に満ちた17年を、うつ病との闘いにすべて費やしてしまった…… ずっとそう思っていました。でも、もしかしたら、この闘いを通して私には、残りの人生を、自分のために生きるのではなく、人のために生きる覚悟が出来たのかも知れません。

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