うつ病は幸せになるためにやって来る(詩)

ペーパーバック書籍「うつ病は幸せになるためにやって来る」の内容を増やし、書店に並べることの出来るソフトカバー書籍として出版する夢を抱いています。書き下ろしの詩や文章の一部をご紹介してゆきます。

うつ病を患っている人は何を感じているのか

もし、うつ病の疑似体験が出来たなら、当事者の置かれている状況が、より正確に周囲の人に伝わるのではないかと思いました。そうすれば、より的確な対応が可能になるかも知れません。しかし、疑似体験には限界があります。なぜなら、たとえ抑うつ気分を感じてみることが出来たとしても、それが毎日、何度も襲ってくる苦しみは、病気になってはじめて体験するものだからです。

抑うつ気分の感じ方は一人一人異なります。しかし、抑うつ気分がもたらす症状には、いくつかの共通点があります。

代表的な症状は「動けない」というものです。

しんどくて起きられない、食事がとれない、風呂に入る気力が起きない、外に出られないなどです。

なぜ、そうなってしまうのか。うつ病を経験したことのない人にはなかなか分からないかもしれません。そこで、抑うつ気分、いわゆる「うつの波」とはどういうものなのか、詩の形でここに綴ってみることにしました。これはあくまでも私の感じ方ですが、典型的なうつ病のエッセンスが含まれていると思います。うつ病とはどういう状態なのか、少しでも分かって頂ければ幸いです。


詩 「うつの波」が来る

そいつは
全身に巻きついて
動きを奪う
太い腕みたいだ

胸の真ん中から生え出て
枝分かれしながら伸び
頭と胴体と四肢を
縛り上げてゆく
目に見えない腕

喉の奥から突き上げてくる
無力感と絶望

身を染める
孤独

周りの景色は波打って膨れ上がり
とてつもなくおおきくなる
まるで水の中にいるかのように
音が遠のく

自分の体が果てしなく
小さくなってゆく
やがて蒸発し
周りの空気に溶けて消えそうだ

力が出ない
起き上がる力も
動く力も
息をする力さえ

一度こうなったら
出来ることはただ一つ
薬のある場所まで這ってゆき
それを飲み下す

そして毛布をかぶり
眠りが訪れるのを待つ


詩 「うつの波」が心をむしばむ

たまにやって来るだけなら
それほどに心がむしばまれることは
ないかも知れない

しかしうつの波は
繰り返し押しよせて来る
来る日も来る日も
体と心を縛り上げる

やがて人は
苦しみと闘うことに
疲れ果てる
疲れ果てても
苦しみはやって来る

逃れることの出来ない波が
心と体をむしばんでゆく

考えてみてほしい
この状況で
食事の支度が出来るだろうか
気分転換が出来るだろうか
瞑想が出来るだろうか
運動が出来るだろうか

唯一出来ることは
休むことだ

すべての義務から解放されて
罪悪感も焦る気持ちも忘れて
眠ることだ


詩 「うつの波」が静まる日

必ず
うつの波から
解放される日が来る

何年もかけて
少しずつ
波が来る頻度は減る
波のことを忘れて
過ごせる日々が
増えてゆく

美味しいものが食べたい
どこかへ出かけたい
何年も忘れていた気持ちが
心に戻って来る

ある日
波が完全に静まる日が来る
いくら待っても
もう波はやって来ない

心の底が
揺らぐことのない
大地になるからだ
水面にさざなみが立っても
大波は生まれることがない

その時、人は
忘れていた幸せを
思い出す
生きている喜びを
噛みしめる

うつ病が終わる日
それは必ず訪れる

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