おうちから音楽療法は届けられる?-音楽療法未満、余興以上の新しいカタチ

これは持病により勤務が不可能になった音楽療法士、体はついてゆかないけれど、やる気は人一倍の私が考え出したアイデアです。音楽療法士が自宅からオンラインで演奏を配信するという方法。思いつく限りの利点と欠点をまとめてみました。

まずはデメリットから。
・能動的音楽療法(クライアントが参加する音楽療法)は出来ない
・音楽療法に欠かすことの出来ない「同じ空間の共有」と、そこから生まれる信頼関係の構築が不可能
・クライアントの置かれている環境や状態の把握、家族や医師、スタッフとの連携が難しいため、特定の人に「音楽療法」という名のもとに提供することは不可能と言える
・配信する音質はいくら頑張っても機械を通した音、生演奏には負ける

こう書くと、非対面での音楽療法は、そもそもあり得ないのではないかと思われるかも知れません。一方で、ラジオから流れてくるような「元気な人たちの音楽」とは違う、ほっと息をつけるような、静かに心を温めてくれるような、治療効果のある音楽、演奏。そういうものを必要としている人たちはいるのではないでしょうか。

どこでも誰でも、スマホ一つあれば聴くことが出来る、リラックス効果のある音楽、いわゆる「癒しの演奏」が存在してもよいのではないかと思います。
まさに、音楽による治療の効果と必要性が一般にはまだまだ認知されていない現在、こういったものを通して、「芸術の力」が病気の快復にどれだけ重要か、気づく人が増えるかも知れません。そういう「音楽療法未満、余興以上」の位置づけとして考えた時、見えてくるメリットがあります。

・クライアントが聴きたいに聴き、いつでも辞めることが出来る
・その時の気分でクライアント自ら曲を選ぶことが出来る(人は自然と自分の心身が必要としているものを選ぶ)
・どのような状況下でも、例えば感染症のために隔離されている病室でも、スマホ一つあれば聴くことが出来る
・お金がかからない、どんな経済状況にある人も公平に享受できる

私が通ったベルリンの音楽療法士養成校では、1000時間の音楽療法実践が卒業に必要な条件でした。これだけの時間数をこなすと、どのような状況で、どの楽器によるどのような演奏が必要か、直観が働くようになります。
私は、起き上がることの難しい患者さんたちの病室を訪ねて演奏することが多かったのですが、既成の曲で使えるものがなく、作曲して演奏する場合が多くありました。知らない曲であるにも関わらず、そういう作品は特に気に入られ、しばしばリクエストされたものです。

帰国してから5年ほど音楽療法の仕事に従事していましたが、持病が悪化して辞めました。ライアー演奏や編曲で稼ぐ道を探そうと、クラシック音楽から映画音楽、アニメソングまでいろいろと弾いていた時期もありました。でも、最近になって、やはり私にとって一番大きな喜びは、音楽療法士としての作曲や演奏なのだと悟りました。

残りの人生、私が一番やりたいことは二つあります。
一つは治療効果のある音楽の作曲、演奏、そして出来る限りハイクオリティでの配信。もう一つは、治療効果のあるライアーの演奏法を伝えることです。
これからはもう、必ずしも音楽療法士の育成である必要はないと思っています。自分の家族に、友だちに、周りの人たちに向けて、そんな演奏を聴かせることが出来たら、それで充分だと。

持病と視覚障害のある私ですが、これはやり遂げたい、いや、きっとやり遂げられると思っています。最後まで読んでくださってどうもありがとうございました。

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