もし目が見えたら―先天性弱視のつぶやき

この世界がどんな姿をしているのか
もし、ふつうに見えたなら
どんなにかおもしろいことだろう
きっといくら見つめても飽きない情景に
あふれているのだろう

もし、ふつうに目が見えたなら
私にはどんなことが出来るだろう
一生懸命に勉強したら
お医者さんになって
人を助けられるだろうか
幼稚園の先生はどうだろう
私が一番なりたかった
チャイルドライフスペシャリストとして
子どもの心に寄り添う道も
開かれるだろうか

もし、ふつうに目が見えて
ピアノの初見演奏が出来たら
次から次へと新しい曲を弾けるだろう
たくさんの人たちの、歌や楽器の伴奏が出来るだろう
音楽が、とても豊かになるだろう

自分の限界を知ることもきっとあるだろう
でも、今はもう少し、もう少しでいいから
限界に広がってほしい

多重人格症の人の人格たちが
治療によって一つに統合されると
それぞれの人格にしか出来なかったことが
ぜんぶ出来るようになるらしい

もし、私の中に
私の知らない人格がいて
その人格はふつうに目が見えたなら
……
そんなはずは絶対にありえないけれど
夢見てしまう

一度死んで、次に生まれるまでの
長い長い時間が
待ちきれなくなるときに


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