詩「心が回復する時」-秀作を賜りました-

夢を見ました
 
月明かりが
ぼんやりと白く照らす
細道を
 
樹の根と岩につまずきながら
一歩、また一歩
登っていました
 
ほんのわずかでも
気をゆるめたら
左側の崖に
呑みこまれてゆくでしょう
 
風が来るたびに
枝をゆすり
いっせいにざわめく
黒い木々
 
時間は
どこかへ消えてしまったのでしょうか
それとも
凍りついて
止まってしまったのでしょうか
 
張りつめた神経が
ちぎれて
はじけ飛んでしまいそうです
 
足は
もうこれ以上
体の重さに耐えられないと
声なき悲鳴を
あげています
 
びっしょりと汗をかいて
目を覚ましました
喉がつまって
息ができません
 
床にうずくまって
呼吸が整うのを待ちました
 
空が
青く染まりかけていました
 
一日が
始まります
 
夜が明けたら
夢の続きの
山道を
また登って
ゆかねばなりません
 
どこで
何をしていても
目を閉じれば
そこは
樹の根と岩だらけの
細道です
 
どこまで続くのでしょうか
 
山頂に辿り着く日は
来るのでしょうか
 
止まってしまった時間は
また動き出すのでしょうか
 
病んでしまった
わたしの心は
回復するのでしょうか
 
誰かに呼ばれたようなきがして
私は足を止めました
 
山の向こう
はるかかなたから
こだまのように返ってくる
あかるい声がありました
 
……
 
花びらが開くくらい
ゆっくりと
 
時間はふたたび
流れはじめるでしょう
 
上り坂は
なだらかになってゆくでしょう
 
月はしずみ
朝日が顔を出すでしょう
 
やがて
空高く昇った太陽は
あなたの心を
照らすでしょう
 
その日が来たら
目を閉じても
もう暗くはありません
 
必ず
 
必ず来る
その日を
信じていてください

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