ライアーから電子ピアノへ、大切なものは「音楽」だから…-シュタイナー音楽療法士である私の決断

今まで約20年間、私はライアーという楽器を演奏してきました。音楽療法のために作られた竪琴のような楽器で、繊細な美しい音がします。私のライアー演奏はこちらでお聴きいただけます⇩ 

ライアーは弦に触れただけでもきれいな音が出るので、はじめて触った人は皆、ほしがります。すぐに高いお金を出して買う人もいます。もちろん、何年も練習を重ねて、すばらしい演奏をするようになる人たちもいます。本当に美しい演奏をしようと思ったら、まったく易しい楽器ではないのです。

残念なことは、ライアーを買った多くの人たちが、買っただけで満足してしまい、ほとんど弾くことなく棚の奥にしまったままにしてしまうことです。職人さんが心を込めて作った楽器なのに……

弦に触れただけできれいな音が出る楽器というものは、誘惑がつきものです。
どういう誘惑か? それは、楽器の音の美しさに酔ってしまい、自分で演奏を作ろうとしなくなるという危険性です。ヴァイオリンやクラリネットなど、他の楽器を想像してみてください。良い音を出せるようになるまで、何年も、練習を重ねなくてはなりません。その練習は、良い音を探すための耳の訓練でもあり、繊細な表現をするための練習でもあります。つまり、楽器の音色と比例して、演奏技術、特に音楽の表現力も高まってゆくのです。


ライアーの場合、意識して表現の練習をしない限り、難しい曲が弾けるようになっても、表情豊かに演奏することができません。その結果、機械的な演奏しかできなくなってしまい、オルゴールと何ら変わりなくなってしまいます。これは、とても悲しいことですが、オルゴールのような演奏で満足してしまう人も多いのです。そういう人たちの関心は、演奏よりも、ライアーという楽器にあるのだと思います。私は決してそれを否定しません。それはそれで、いいと思っています。喜びが生まれる方が、苦労を産むよりずっと生産的です。

しかし、私自身は、音楽療法士です。音楽療法士は、良い楽器ではなく、良い演奏を求めます。良い演奏とは、楽器に付随しているものではなく、演奏者の内面から湧き出て来るものです。「想いを込めて演奏する」のとはちがいます。良い演奏をするためには、良い耳を持たなくてはなりません。音を、音のつながりを、和声の響きを、詳細に聴き分け、その一つ一つを美しく整える感性と精神力です。その土台となるものは、ソルフェージュ能力、そして音楽理論や文化、歴史などさまざまな知識です。

どんな楽器でも良い演奏が出来てこそ、音楽性のある人間だと、私は思っています。
自分がそのような人間であり、より音楽性の高い人間になるために、私は電子ピアノを買いました。ライアーは一度、お休みです。私が買ったのは、決して質の悪いピアノではありませんが、7万円です。電子ピアノの中では、安い方です。あえて、この楽器を選びました。この電子ピアノで、自分はどこまで音楽的な表現が出来るか、試し、挑戦するためです。


もちろん、グランドピアノが置けるような環境と、防音設備があるなら、最高です。しかし、現代の都会の住宅事情を考えると、ほとんどの人たちにとって、それは実現不可能なことです。私も含めて。

それでも、これだけの演奏が出来る……、そう思ってもらえるような演奏を目指して、練習を積み重ねてゆきたいと思います。同時に、多くの人たちが一度は習ったことがあり、多くの人たちの家の片隅で眠っているであろうピアノ。そんなピアノに、もう一度、音楽の息吹を吹き込みたいと思いました。

練習しなくても弾ける簡単で美しいピアノアレンジ楽譜と、オリジナル・ピアノ曲の楽譜を、このサイトではアップしています。カタカナをふった楽譜も挙げています。いずれは収益化するかも知れませんが、今はまだ、無料です。アレンジ楽譜は、著作権が消滅した曲しか挙げられませんが、美しい日本の唱歌や世界の民謡、クラシック音楽など、幅広く編曲してゆきたいと思います。

一人でも多くの人たちに、もう一度、ピアノに触れ、音楽の喜びに出会ってもらえたら嬉しいです。それが、今は仕事が出来ない体になってしまった元音楽療法士である私から皆さんへのささやかな音楽療法です。

#ライアー #Leier #Lyre

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